このページの要点
- 契約書の名前ではなく中身で性質を見る。活動を継続して行う部分は準委任に近く、納品する部分は請負に近い。
- 自動更新の通知期限と方法、専属性の範囲、休みの申請や連絡の期限、SNSや外注の承認は、活動の自由を左右するため目的と範囲を確認する。
- 成果物の範囲、人格権の不行使、モデル・名前・アカウントの帰属とやめた後の使用は、「誰のものか」と「どこまで使えるか」を分けて確かめる。
- 解除事由、違約金の算定根拠、損害賠償の範囲(逸失利益を含むか)、退所後の義務は、トラブルの日に最も効く条項として修正を検討する。
契約書を渡されたら、まず「重さ」を3つに分けて読む
所属先や企業から契約書を渡されたとき、条文の数が多く、どこが一般的で、どこが重いのかが分からない、という悩みは非常に多くあります。配信者に渡される契約書は、所属先の側で用意した雛形が出発点になることが多く、運営の都合に合わせて一方向に有利な条項が多く含まれやすい、という傾向があります。ただし、「一方的だからすぐ不当」というわけでもなく、必要な管理のための条項もあります。大切なのは、一つひとつの条項が「何のための定めか」と「どこまで及ぶか」を見分けることです。
読む順番として、条項を、重さの種類で3つに分けて見る方法があります。①お金と期間とやめ方(活動の経済的な土台)、②作ったものと名前の権利(活動の資産)、③私生活に近い拘束(活動の自由)です。この3つのうち、どれが重いかで、署名の前に質問したり、修正を求めたりする優先順位が決まります。以下は特定の契約書の説明ではなく、一般に見られる書き方の整理です。まず結論を、次の5点にまとめます。
- 契約書の名前(所属契約、マネジメント契約、業務委託契約)ではなく、中身(誰が何を指示し、報酬はどう決まり、何が誰のものになるか)で性質を見る。
- 期間と更新、通知の期限、やめるときの費用が、活動の自由を最も左右する。自動更新の通知期限と違約金は、必ず日付と金額の計算まで確かめる。
- 休みの申請、連絡の期限、新しいSNSアカウントの承認、外注の報告のような私生活に近い拘束は、目的と範囲が限られているかを見る。
- 成果物、モデル、名前、アカウントの帰属は、「誰のものか」と「やめた後に誰がどこまで使えるか」の両方を確かめる。
- 解除、違約金、損害賠償は、事由が具体的か、金額の根拠が示されるか、賠償の範囲が限定されているかを確認する。
確認の一覧:15の項目と、見る条文(一般的な整理)
| 項目 | 見る条文 | 重くなりやすい書き方 | 本ページの節 |
|---|---|---|---|
| 1 期間と自動更新 | 民法521条、フリーランス法16条 | 長い期間の自動更新、更新拒絶の通知期限が直前 | 期間・更新・専属 |
| 2 通知の方法と期限 | 民法522条 | 通知先・方法が一方に有利、期限が短い | 期間・更新・専属 |
| 3 専属性・個人の活動の承認 | 民法521条・90条 | 他所属の禁止、個人での出演や活動を事前承認制にする | 期間・更新・専属 |
| 4 休み・連絡・出勤に近い拘束 | 民法90条 | 休みの事前申請、短い応答期限、連絡の途絶での解除 | 私生活に近い拘束 |
| 5 SNSアカウント・外注の事前承認 | 民法90条 | 新規アカウントの事前承認、外注先と内容の報告 | 私生活に近い拘束 |
| 6 報酬の決め方と変更 | フリーランス法3条・4条・5条 | 金額が別途協議、一方的な変更、段階的な分配率 | 報酬・控除・支払 |
| 7 控除・手数料・支払日・明細 | フリーランス法4条 | 控除項目が列挙されない、明細の交付がない | 報酬・控除・支払 |
| 8 成果物の帰属 | 著作権法17条・59条・61条 | 業務の過程で作ったものすべてが所属先の権利、人格権の不行使 | 成果物・名前・アカウント |
| 9 モデル・名前・アカウントの帰属 | 著作権法61条(モデル)。名前は商標登録の有無で扱いが変わる | やめた後の使用禁止、買取り価格を一方が決める | 成果物・名前・アカウント |
| 10 解除事由 | 民法541条・542条 | 通知なしの即時解除、抽象的な「信用失墜」 | 解除・違約金・賠償 |
| 11 違約金 | 民法420条・90条 | 初期の自己都合解除に制作費を含める | 解除・違約金・賠償 |
| 12 損害賠償の範囲 | 民法415条 | 逸失利益や間接損害まで含む | 解除・違約金・賠償 |
| 13 退所後の義務 | 民法90条 | 期間・範囲の広い競業制限、名前・モデルの使用禁止 | 解除・違約金・賠償 |
| 14 秘密保持・個人情報 | 契約書の定めと個人情報保護法 | 範囲が広く、期間が長く、返還・破棄の証明を求める | 解除・違約金・賠償 |
| 15 準拠法・管轄・協議 | 契約書の定め(準拠法・管轄・協議) | 遠方の裁判所の専属管轄、協議の前置 | 解除・違約金・賠償 |
「何の契約か」を先に決める:準委任型・請負型・混合型
契約書の名前は「所属契約書」でも「業務委託契約書」でも、中身は一様ではありません。条文の読み方は、契約の型によって変わります。民法は、仕事の完成を約束する契約を請負(632条)、法律行為をすることを委託する契約を委任(643条)、法律行為でない事務の委託を準委任(656条)として定めています。配信への出演や、継続的な活動への参加は、結果の完成を約束するというより、事務や役務を継続して行うことを内容とするため、準委任に近い性質をもつことが多くなります。一方、動画や素材を納品する部分は、完成した成果物の引渡しを求める点で請負に近くなります。
契約の型ごとに変わる読み方(一般的な整理)
準委任に近い型
活動や役務を継続して行う
- 報酬は、活動に対する対価として支払われる
- 民法651条は、委任の各当事者はいつでも解除できるとするが、相手に不利な時期の解除は損害賠償の対象になりうる(同条2項)
- 契約書で解除や違約金を別に定めている場合は、その定めを確認する
請負に近い型
完成した成果物を引き渡す
- 報酬は、仕事の結果に対して支払われる
- 納品の基準、検収、修正の範囲が重要になる
- 完成前に解除された場合は、既にした仕事のうち可分な部分の割合に応じて報酬を請求できる場合がある(民法634条)
混合型
活動と成果物の納品が混ざる
- 活動の部分と納品の部分を、条文ごとに分けて読む
- 成果物の権利の帰属が、どの部分に及ぶのかを確認する
- 報酬が、どの部分の対価なのかを確認する
雇用契約として扱われるかどうかは、これらとは別の判断であり、このガイドの範囲外です。契約書の名前や、「雇用ではない」という確認文言があることだけで、すべてが決まるわけではありません。
期間・更新・通知・専属性:活動の自由を左右する4つの条項
最初に見るのは、期間です。契約期間が定められ、期間満了の一定期間前までに、いずれかが終了の意思表示をしない限り、同じ条件で自動的に更新される、という書き方は、広く見られます。この書き方自体は一般的ですが、読むべきは、更新を拒絶するための通知期限と方法です。たとえば、更新拒絶の期限が、満了の直前や、契約書のどこにも書かれていない方法で行うことになっていると、期限を過ぎたことに気づかないまま、次の期間に入ってしまいます。契約書に書かれた通知の方法(書面、メール、特定のフォーム)が、実際に自分が行える方法かも確認します。
報酬を受ける側(特定受託事業者)の立場で、継続的な業務委託の解除や更新拒絶には、委託した側に、少なくとも30日前までの予告をする義務が課される場合があります(フリーランス法16条1項。対象は6か月以上の業務委託。施行令3条)。この点は、フリーランス法・取適法のページで整理しています。契約書に、これより短い予告や、予告なしの解除が書かれている場合は、その定めと法の予告義務の関係を確認します。
次に、専属性です。「契約期間中、書面による事前承認なく、他の事務所への移籍または所属をしない」「個人的に出演や活動の依頼を受けるときは、事前に書面で相談し、承認を得る」といった書き方があります。他所属の禁止は、所属の関係では理解しやすい定めです。一方、個人の活動全般を承認制にする書き方は、専属の範囲を越えて、本人の活動の自由に及びます。契約をする自由は民法が認めており(521条)、当事者の合意で活動を制限することも可能ですが、制限の目的、範囲、期間が過度であれば、公序良俗に反するものとして効力が問題になりえます(民法90条)。
書き方の例(一般的な例) 期間・更新・専属の書き方
自動更新
理由通知の期限と方法を、実際に行える形にする。更新の条件の通知を、先に相手に義務付ける。
専属
理由禁止する範囲を、競合するマネジメントに絞り、除外する活動を明示する。
個人の活動の承認
理由承認の対象を競合に絞り、拒否の理由を示させる。
私生活に近い拘束:休み・連絡・SNSアカウント・外注の報告
配信者に渡される契約書には、活動の時間の使い方や、連絡の取り方、SNSの運用に関する細かい定めが入ることがあります。たとえば、翌月の希望休を月の中ほどまでに申請する、連絡を受けたら一定の時間内に応答する、一定の期間連絡が取れない場合は解除する、新しいSNSアカウントを作るときは事前に承認を得る、活動に必要な制作物を外部に頼むときは外注先と内容を報告する、といった定めです。
こうした定めには、運営の側の合理的な目的があります。連絡が取れないと配信の予定が組めない、アカウントの運用を誤ると炎上や権利侵害につながる、外注先に機密情報が渡ると漏えいの危険がある、などです。一方で、配信者の側から見ると、個人の生活の時間や、個人で使うSNSの自由に及ぶ定めでもあります。そこで、目的と範囲が釣り合っているかを見ます。
署名の前の問いと理由私生活に近い拘束を読むときの問い
休みの申請は、「承認」が必要か、「届出」で足りるのか。
承認制だと、断られたときに休めない。体調不良などの緊急時の扱い(事後の連絡で足りるか)が書かれているかも見る。
連絡の応答期限は、現実に守れる長さか。途絶した場合、解除に直結しないか。
短い期限と即時解除が結び付くと、通信障害や体調不良でも解除事由になりえる。事前の催告や猶予があるかを見る。
新しいSNSアカウントは、すべて承認の対象か。個人の私的なアカウントも含まれるか。
活動用のアカウントに絞られているかを見る。「既存のアカウントの管理も指示に従う」とあれば、範囲が広がる。
外注は、報告か、承認か。報告の目的は何か。
機密や権利の漏えいを防ぐ目的なら、報告の内容や時期を限れる。承認制は、本人の外注の自由を狭める。
これらに違反した場合の効果は、何か(是正の求めか、解除か、違約金か)。
是正の機会を与えるのか、直ちに解除なのかで、重さが変わる。
定めの目的が分かれば、目的に必要な範囲に絞る修正を求める根拠にもなります。
書き方の例(一般的な例) 拘束の書き方
休み
理由承認制を連絡に改め、緊急時の扱いを明記する。
連絡の途絶
理由催告と猶予を置き、突然の解除を避ける。
SNSアカウント
理由対象を活動用のアカウントに絞る。
報酬・控除・支払:金額が決まる仕組みを数えられる形にする
報酬の条項で最も大切なのは、報酬が「いくらになるのか」を、自分で計算できる形で書かれているかです。「具体的な金額と割合は、別途書面で定める」「甲と乙が協議の上決定する」という書き方は、契約書の段階では金額が決まっていません。この場合、別の書面が実際に作られ、署名するまでは、報酬の額が確定しません。委託を受ける取引では、報酬の額や支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務が、委託した側にあります(フリーランス法3条1項)。契約書で金額を決めない場合は、別紙や条件通知書を、いつ、どの形で受け取るのかを確認します。
報酬を、登録者数や再生数に応じて段階的な割合で分配する書き方も多くあります。このとき、割合の基準となる数値(登録者数をいつの時点で数えるか、どのプラットフォームの数値を使うか)、割合の変更の条件を確認します。また、報酬の「変更」の条項(必要に応じて変更する場合がある)には、変更の理由の説明、事前の通知期間、合意の要否が書かれているかを見ます。
報酬条項の見どころ(一般的な整理)
| 見どころ | 確認すること | よくある不明点 |
|---|---|---|
| 金額の決め方 | 金額または割合が、契約書か別紙で確定しているか | 「別途協議」「別途書面」のまま、書面が作られていない |
| 分配の基準 | 何の収益が対象か。登録者数などの数え方 | 数値の基準日、対象の収益の定義がない |
| 報酬の変更 | 変更の理由、通知期間、合意の要否 | 「必要に応じて変更できる」だけで、手続がない |
| 控除 | 控除される項目(手数料、決済費用、そのほか)と、計算の方法 | 控除する項目が列挙されず、「甲が控除した後の金額」とだけ書かれている |
| 支払日・方法 | 締め日、支払日、振込手数料の負担、休日の扱い | 支払日が具体的でない。入金が条件になっている |
| 明細 | 報酬の内訳を示す明細が交付されるか | 明細の定めがなく、金額だけが振り込まれる |
| 遅延 | 支払が遅れたときの扱い(遅延損害金) | 遅延時の定めがない、または一方だけに課される |
金額を書くときは、税込か税別かを明記してもらいます。また、継続的な委託では、責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額することは、禁止行為にあたりえます(フリーランス法5条1項2号)。契約書の減額の条項が、配信者の責めに帰すべき事由に限られているかを確認します。
成果物・モデル・名前・アカウント:「誰のものか」と「やめた後」
契約書で最も重い意味をもつのが、権利の帰属です。業務の過程で作られたものの権利が、すべて所属先に帰属すると書かれることがあります。著作権法は、著作者の権利として、著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)と、著作権(複製権、公衆送信権、翻案権など)を定めています(17条)。著作権は、全部または一部を譲渡できます(61条1項)。著作権を譲渡する契約で、翻案権(27条)や二次的著作物の利用に関する権利(28条)が譲渡の目的として特に掲げられていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(61条2項)。このため、権利を取得する側は、「27条及び28条の権利を含む」と書くのが一般的です。また、著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡できません(59条)。そのため、人格権については、「行使しない」という定め(不行使特約)で処理するのが一般的です。
配信者の側から見るときは、①「成果物」の範囲が、どこまで広いか、②自分が契約前から持っていた権利や、契約外で自分で作ったものが含まれないか、③人格権の不行使が、どこまで及ぶか、④契約が終わった後の使用の範囲、を確認します。たとえば、「業務遂行の過程で制作、開発、または取得した一切の成果物(有形無形を問わない)」とあれば、配信の映像だけでなく、自分で描いたイラスト、台本、音声、SNSの投稿文まで含まれる読み方も成り立ちます。契約書の「既存の権利は本人に留保する」という定めの有無も、あわせて確認します。
書き方の例(一般的な例) 権利の帰属の書き方
成果物の範囲
理由帰属の対象を、所属先が費用を負担して作ったものなどに絞る。
人格権
理由不行使の範囲を、契約の目的の範囲に絞る。
モデル・名前
理由価格を一方に任せず、算定の方法を事前に決める。
モデルや名前の扱いは、やめた後の活動に直結します。契約書が、モデルの権利は所属先が保有し、本人は許可された範囲でのみ使用できるとしているとき、契約終了後に本人が同じ姿で活動を続けられるかは、買取りや使用許諾の定めにかかっています。「協議により相談できる」とだけ書かれていると、価格や条件が決まらないまま、活動が止まることになります。この点は、休止・卒業・転生の取り決めのページで、やめた後に残るものとして整理しています。
解除・違約金・損害賠償・退所後の義務:トラブルの日に効く条項
契約書は、トラブルが起きた日に読まれる書類でもあります。解除、違約金、損害賠償、退所後の義務は、その日に最も効く条項です。
解除。民法は、相手が債務を履行しないとき、相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ解除できるとしています(541条)。履行の不能や、履行拒絶の意思の明示などの場合は、催告なしで解除できます(542条)。契約書は、これと別に解除事由を定めることができます。反社会的勢力との関係や、重大な法令違反を理由に、通知なしで解除できるとする定めは、広く見られます。確認したいのは、「不適切と評価される行為」「信用失墜の疑い」のように、範囲が抽象的で、疑いだけで足りるような事由がないかです。事由が抽象的であるほど、運営の判断で解除できる範囲が広がります。
違約金。当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定できます。違約金は、賠償額の予定と推定されます(民法420条)。契約の初期に自己都合で解除する場合の違約金に、モデルや衣装の制作に要した費用を含める書き方があります。この書き方は、投下した費用を回収する目的として理解できる面があります。一方、金額が実際に要した費用と釣り合っているか、時間の経過とともに減る仕組みがあるか、活動の実績で回収された分が考慮されるかを確認します。金額が過大であれば、公序良俗に反して一部が無効になる可能性もあります(民法90条)。なお、消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除に伴う違約金が平均的な損害を超える部分を無効とする規定ですが、消費者契約にあたらない取引には直接は及びません(同法2条)。事業として活動する配信者に当たるかは、実態によります。
損害賠償の範囲。債務不履行による損害賠償は、民法415条1項に基づきます。契約書が「直接的な損害及び間接的な損害(逸失利益を含む)」と書いているときは、請求できる損害の範囲が広く定められています。配信者の側から見ると、解除の理由が曖昧なまま、逸失利益まで請求される危険が生じます。賠償の範囲を、通常生ずべき損害に限る、上限を置く、故意または重大な過失の場合に限る、といった修正が考えられます。
退所後の義務。契約終了後に、一定期間、同種の活動を禁止する、名前やモデルの使用を禁止する、秘密保持を続ける、という定めがあります。競業の禁止は、期間、地域、対象の活動の範囲が限定されていなければ、公序良俗に反する可能性が生じます(民法90条)。秘密保持は、機密情報の範囲と期間が、実態に即しているかを確認します。
書き方の例(一般的な例) 解除・違約金・賠償の書き方
解除事由
理由「疑い」ではなく確認された事実に限り、軽微な違反は催告の対象にする。
違約金
理由定額を実費の未回収分とし、算定の根拠の提示を義務付ける。
損害賠償
理由範囲を限定し、上限を置く。
最後に、準拠法や管轄裁判所の定めがあります。日本法を準拠法とし、特定の裁判所を専属的な管轄とする書き方が一般的ですが、遠方の裁判所が専属とされていないか、協議が前置されていて、協議に応じない相手のために手続が進まなくならないか、を確認します。
署名の前の進め方と、起きがちなこと
15項目をすべて理解してから署名するのが理想ですが、現実には、時間が限られていることが多くあります。そのときは、次の手順で進めると、確認の抜けを減らせます。
署名前の進め方(一般的な手順)
署名を急かされるときは、急ぐ理由を尋ねます。説明を求めた記録は、あとで契約の趣旨を確認する手がかりになります。
プラットフォームの規約が契約書の下に流れ込む仕組みはプラットフォームの規約と契約の二重構造のページで、契約全体の地図は配信者の契約の全体像のページで整理しています。トラブルになったときの確認の順番はトラブルになったときの確認とよくある質問のページにまとめます。
起きがちなこと
- 更新拒絶の期限を過ぎたことに気づかず、不本意な期間が続く。
- 休みの申請や連絡の応答が、契約の解除事由に結び付いていることを、後から知る。
- 契約書では金額が「別途書面」のままで、書面が作られないまま活動が始まり、報酬の額が争いになる。
- 自分で作ったイラストや台本まで、所属先の権利になると言われる。
- やめるとき、名前やモデルの買取りの価格を一方から提示され、交渉の余地がない。
- 契約の初期にやめたいと伝えたところ、費用の内訳が示されないまま、定額の違約金を請求される。
- 「信用失墜の疑い」を理由に、通知なしで解除される。事実の確認の機会がなく、損害賠償の請求にまで及ぶ。
- 口頭の説明を信じて署名したが、契約書の文言は、説明と違っていた。
よくあるご質問
所属契約書を渡されましたが、署名の前に最低限どこを見ればよいですか?
期間と自動更新(通知の期限と方法)、早期にやめるときの違約金の算定、休みの申請や連絡の期限といった私生活に近い拘束、成果物・アカウント・名前・モデルの帰属とやめた後の扱い、解除事由と損害賠償の範囲、報酬の変更・控除・支払日を順に確認します。分からない条文には印を付けて質問し、返事を文字で残します。
契約書に違約金の定めがあります。必ず払わなければならないのですか?
違約金は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。定めがあれば原則としてその効力が問題になりますが、金額が過大で公序良俗に反する場合などは、一部が無効になる可能性もあります(民法90条)。まず、どの場合に発生する違約金か、金額の根拠が何か、実際の費用と釣り合っているかを確認します。
契約書に「通知なしで直ちに解除できる」とあります。受け入れるしかないですか?
契約書の解除事由は、当事者が合意して定めるものです。ただし、事由が抽象的で、疑いだけで足りるような書き方のときは、署名の前に、事実の確認や催告を前置する修正を求めることができます。継続的な業務委託では、法律上の予告義務が別に働く場合もあります(フリーランス法16条)。
自分で作ったイラストや台本も、所属先の権利になりますか?
契約書の「成果物」の範囲の書き方次第です。「業務遂行の過程で制作した一切の成果物」と書かれていれば、広く含まれる読み方も成り立ちます。契約前から持っていた権利や、自分の費用で作ったものを除くという定め(留保)があるかを確認し、なければ、署名の前に範囲を絞る修正を求めます。
やめた後、同じ名前やモデルで活動を続けることはできますか?
契約書の定めによります。名前やモデルの権利が所属先にあり、使用が禁止され、買取りの価格を所属先が決める書き方だと、続けられるかは交渉にかかります。署名の前に、やめた後の使用の可否、買取りの算定の方法、使用許諾の条件を確認し、曖昧なときは明確にしておくことが重要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、契約の相手方、取引の実態、プラットフォームの規約によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 消費者庁 / 文化庁 / 個人情報保護委員会