このページの要点
- 配信は公衆送信にあたり(著作権法2条1項7号の2、23条)、権利者の許諾の範囲内で行う。許諾の範囲外の利用は許諾を得ていない利用になる(63条2項)。
- ガイドラインは、配信の可否・収益化・禁止事項・対象バージョン・編集・表記・変更の項目に分けて読み、読み手の側で範囲を広げない。
- 引用(32条1項)は目的・主従・出所が問われ、営利を目的としない上演等(38条1項)は広告収益や投げ銭のある配信には当てはまりにくい。
- 音楽は作詞・作曲、原盤、実演の権利が重なる。包括的な許諾の対象となる配信の種類・録画の公開・収益化は、提供事業者の公表資料の原文で確認する。
結論:配信してよいかは「作品ごとの権利者が示す範囲」で決まり、判断には順序がある
ゲーム実況や、映像・音楽・他人の作品を使った配信で最初に確かめることは、「その作品の権利者が、配信について何を許しているか」です。公式の遊び方の説明や、禁止の表示がないことは、許可があることを意味しません。配信は著作物を公衆に送信する行為であり、著作物を利用する側は、権利者の許諾を得るか、著作権法が定める例外の要件を満たす必要があります。
実際の判断は、次の順序で進めると迷いが少なくなります。
- 何を配信に載せるのかを分ける:ゲームの映像、ゲームの音声・音楽、自分の声と顔、コメント、BGM、他人の動画の一部、画面に映るもの、を別々の素材として数える。
- 権利者が公表している方針を探す:配信の可否、収益化の可否、禁止事項、対象のバージョン、期間が書かれた文書(以下「ガイドライン」)があるかを、権利者の公式な場所で確かめる。
- ガイドラインがない、または範囲外なら、個別に確認する:権利者の連絡先に問い合わせ、返答を記録に残す。返答がないことは許可ではない。
- 例外規定は最後に検討する:引用などの例外は、要件が厳しく、「配信すれば足りる」ものではない。
- 自分の契約の側も見る:所属先や案件の契約に、権利処理の責任を配信者に負わせる条項があるときは、その範囲を確かめる。
このページは、権利者のガイドラインを読んで「配信してよい範囲」を決める配信者の側の視点で書いています。個別の作品の名前や、各社のガイドラインの具体的な内容は扱いません。作品ごとの条件は更新されることがあるため、必ず権利者の公式な原文で確認してください。切り抜きや二次創作を許すときの文書の作り方は切り抜き・二次創作のガイドラインで、プラットフォームの規約との重なりはプラットフォームの規約と個人の契約の二重構造で説明しています。
配信は何にあたるのか:公衆送信と、素材ごとに別れる権利者
著作権法で「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(2条1項1号)。ゲームの映像や音声は、一つの素材のように見えても、実際には複数の著作物の集まりです。たとえば、背景やキャラクターの絵(美術の著作物)、物語や台詞(言語の著作物)、楽曲(音楽の著作物)、ゲームを動かすプログラム(プログラムの著作物)が含まれます。映像としてまとまった部分は、映画の著作物にあたる場合もあります(10条1項に著作物の例示があります)。
配信は、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことで、「公衆送信」にあたります(2条1項7号の2)。著作者は、その著作物について公衆送信を行う権利を専有します(23条1項)。録画して保存することは複製(21条)、録画を再生して流すことは公衆送信や上映(22条の2)に関わります。つまり、生配信でも、録画の公開でも、他人の著作物を使う限り、権利者の許諾か例外規定が必要になる、というのが出発点です。
ここで押さえたいのは、「自分が遊んでいる」ことと「それを公衆に送信する」ことは、法律上別の行為だという点です。ゲームを買った、または利用許諾を受けて遊ぶことは、遊ぶための権利です。それを配信して多くの人に見せる権利までが当然に含まれるわけではありません。ゲームの権利者が配信を歓迎する方針を示している作品が多いのは、権利者が、その方針の範囲で配信を許諾しているからです。許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で著作物を利用できます(63条2項)。逆にいえば、範囲の外へ出た利用は、許諾の範囲外になります。
配信に載る素材と、確かめる権利者
ゲームの映像・キャラクター
作品の権利者
- 配信の可否・収益化の可否をガイドラインで確認
- 映像を編集して公開するときは、編集の許容範囲も確認
- ガイドラインがなければ個別に確認する
ゲームの音声・楽曲
権利者とは別の場合がある
- 作品に組み込まれた楽曲は、作品の権利者が一括して許諾している場合と、別の権利処理が要る場合がある
- 音楽だけを抜き出す利用は別扱いのことが多い
市販の楽曲をBGMに流す
作詞・作曲、レコード、実演の権利者
- 作詞・作曲の権利、原盤(レコード製作者)の権利、歌手・演奏者の権利が重なる
- 包括的な許諾の範囲に入るかを、プラットフォームと管理事業者の公表資料で確認
他人の動画・画像を見せる
作成者・投稿者
- 視聴の共有(リアクション)でも、画面に出す時間と分量で許諾が必要になりうる
- 引用の要件を満たすかを別に検討
自分の声・顔・実況
自分(実演家、著作者)
- 自分の権利でも、所属先や案件の契約で利用を許諾していることがある
- 共演者の声・顔が入るときは共演者の同意が要る
大会・イベントの映像
主催者と出場者
- 競技やイベントの配信は、権利者のガイドラインとは別に主催者の許可が要る
- 主催者が配信の条件を定めていることが多い
表の「権利者」は、一般にそう分かれることが多いという整理です。実際の権利者は、作品ごとの契約で決まっています。
権利者のガイドラインを読む:配信の可否・収益化・禁止事項・バージョンの型
権利者が配信について方針を公表している場合、その文書は、おおむね次のような項目で構成されています。項目の名前は文書ごとに違いますが、読むときの観点は共通です。
ガイドラインで確認する項目と、読むときの注意
| 項目 | 書かれ方の型 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 配信の可否 | 「許可する」「条件つきで許可する」「許可しない」 | 許可の対象が「個人の配信」か「事業者の配信」か、「生配信」か「録画の公開」かを分けて読む |
| 収益化 | 「広告収益は可」「投げ銭は可」「物販やスポンサーは不可」など | 収益の種類ごとに書かれていることが多い。書かれていない収益は、許可されたと読まず、確認する |
| 禁止事項 | 「物語の核心の公開(ネタバレ)」「発売前の内容」「不正なプレイ」「他者への攻撃的な表現」など | 禁止事項に触れたときの扱い(削除要請・許諾の取消し)が書かれているかを見る |
| 対象バージョン・期間 | 「現行の製品に限る」「発売後一定期間は不可」 | 発売直後や、新しい更新の直後に例外があることがある。日付を確認する |
| 編集・加工 | 「映像の一部改変は可」「音声の差し替えは不可」 | 切り抜き・サムネイル・告知の使い方まで及ぶか確認する |
| クレジット・表記 | 「公式の素材である旨を示す」「非公式であることを明示する」 | 概要欄に書く文言まで指定されていることがある |
| 変更・撤回 | 「予告なく改定することがある」 | いつの版を読んだかを記録する。変更後に古い配信をどう扱うかも確認する |
ガイドラインの文言を、配信者が自分の側で読み替えてしまうことが、起きやすい誤りです。「個人の配信を歓迎する」は、「法人が運営するチャンネルで同じことをしてよい」という意味とは限りません。「収益化を妨げない」は、「広告以外の案件や物販も自由にしてよい」とは限りません。読み手の側で範囲を広げず、文言のとおりの範囲に収めます。
また、ガイドラインは契約書のように署名して結ぶものではないため、法的な位置づけが分かりにくいことがあります。権利者が公表したガイドラインに従って配信する場合、一般には、権利者が示した範囲で利用を許諾していると理解されます。その範囲を外れる利用は、許諾を得ていない利用になりえます。ガイドラインの法的な効力や、公表の形式による違いは、文書の内容と所管官庁・権利者の資料で確かめる必要があります。
署名の前の問いと理由ガイドラインを読んだあとに確かめる問い
自分の配信は、ガイドラインの「対象」に入っているか(個人か法人か、生配信か録画か)。
対象の外にある配信は、許諾の範囲外になりうるため。事務所に所属して法人名義で活動する場合は特に確認が要る。
収益化の種類(広告・投げ銭・会員制・物販・案件)は、それぞれ可と書かれているか。
書かれていない種類は、許可されたと読めないため。案件を受けるときは、広告主にも同じ範囲を伝える必要がある。
対象のバージョンや期間は、今の配信に合っているか。
発売直後や更新直後の例外が書かれていることがあるため。
編集して公開するとき(録画の公開、切り抜き、告知の動画)の条件は書かれているか。
生配信の条件と、録画の公開の条件が別のことがあるため。
読んだ版の日付と、確認した場所を記録したか。
後でガイドラインが変わったとき、配信した時点で許されていたことを示せるようにするため。
ガイドラインの記録は、画面の保存や、確認した日付の控えで足ります。
引用・営利を目的としない上演:「配信すれば足りる」ものではない
権利者の許諾がない作品を配信に載せるとき、よく持ち出されるのが「引用なので問題ない」という考え方です。公表された著作物は、引用して利用することができます。ただし、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければなりません(32条1項)。
この条文は、引用する側の文章や映像が主で、引用された部分が従であること、引用された部分が明確に区別されていること、引用の目的があること、といった観点で読まれます。作品の映像をそのまま流しながら、ほんの一言だけ感想を述べる、というのでは、引用の目的が実況の添え物になってしまい、要件を満たすかが難しくなります。配信者が作品を「見せる」こと自体が内容の中心になる配信では、引用の例外に頼るのは危うい、と整理しておくのが安全です。
もう一つの誤解は、営利を目的としない上演等の例外(38条1項)です。この規定は、公表された著作物を、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けず、実演家に報酬が支払われない場合に、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述できるとするものです。広告収益を得る、投げ銭を受ける、会員から料金を受ける配信は、この要件に当たらない可能性が高く、「趣味だから」「少人数だから」では例外の理由になりません。公衆送信そのものについては、同条の別の項に限られた定めがあり、一般のインターネット配信にそのまま当てはまる規定ではありません。
例外規定を検討するときの見方
引用(32条)
目的・主従・出所
- 引用の目的(批評・研究・報道など)がある
- 自分の表現が主で、引用部分が従になっている
- 引用部分が区別され、出所が分かる
営利を目的としない上演等(38条)
営利・料金・報酬のすべてがない
- 広告収益・投げ銭・会員料金のいずれかがあれば当てはまりにくい
- 出演者に報酬を支払う場合は当てはまらない
付随対象著作物(30条の2)
映り込みの軽微な利用
- 撮影・録画・配信の対象に付随して写り込む著作物で、軽微な構成部分にとどまる場合
- 意図して見せる、中心に据える利用は対象外
例外規定は、要件に当てはまるかを個別に判断します。当てはまるかどうかが分からない利用は、権利者の許諾を得る側に倒します。
BGM・音楽:包括的な許諾の範囲と、範囲の外に出る場面
音楽は、配信でもっとも権利関係が複雑な素材です。一つの楽曲の再生には、作詞・作曲の権利(著作権)、録音された音源に関する権利(レコード製作者の権利:複製権96条、送信可能化権96条の2)、歌手・演奏者の権利(実演家の権利:録音・録画権91条、送信可能化権92条の2など)が重なります。配信で市販の音源を流せば、これらの権利者が関わることになります。
動画配信プラットフォームや音楽の管理事業者が、利用者向けに一定の包括的な利用許諾を結んでいる場合があります。この許諾は、配信者個人が楽曲ごとに権利者と交渉する負担を減らすための仕組みですが、すべての配信が対象になるわけではありません。許諾の対象になる場面と、ならない場面は、提供事業者の公表資料の原文で確認する必要があります。ここでは、確認が必要になる観点を整理します。
音楽を使う場面ごとの確認の観点
| 場面 | 関わる権利 | 確認すること |
|---|---|---|
| 市販の音源を配信のBGMに流す | 作詞・作曲、原盤、実演 | プラットフォームの包括許諾の対象になる配信の種類か。生配信は対象でも、録画の公開は対象外ということがあるか |
| 市販の楽曲を自分で歌う・演奏する | 作詞・作曲(音源は使わない場合) | 歌唱は実演、楽曲は作詞・作曲の利用。伴奏に市販の音源を使えば、原盤の権利も関わる |
| 配信に付属する制作素材(BGM用の音源集) | 制作者 | 利用規約で、配信・収益化・加工・再配布の可否と、クレジットの表示を確認する |
| 録画を公開し続ける(アーカイブ) | 作詞・作曲、原盤、実演 | 録画の保存や再公開に対する許諾の範囲。期間が限られていないか |
| 音楽の部分だけを切り出す、音楽を主役にする | 同上 | 包括許諾は「背景として」の利用に限られることがある。音楽が主な内容になる配信では範囲外になりうる |
| 収益化している配信 | 同上 | 広告・投げ銭・会員制の収益化が許諾の対象かどうか |
配信中に音楽の著作物の権利者から申立てを受け、映像が消されたり、収益が止まったりした場合に、それが権利者の申立てなのか、プラットフォームの自動的な仕組みなのかによって、対応が変わります。ただし、個別の手続は事業者ごとに違うため、ここでは、申立ての内容と、どの権利者かを確認し、記録を保存するという一般的な手順にとどめます。
音楽の権利処理を契約書に書くときは、「乙は、配信に用いる楽曲その他の著作物について、必要な許諾を自らの責任と費用で得る」というような責任の押しつけが入ることがあります。配信者が引き受けるのは、配信者自身が権利処理をできる範囲に限る、という整理が重要です。事務所や案件の相手方が、BGMの素材や選曲を指定して配信させる場合は、その素材の権利処理は指定した側が負うべきで、配信者が負う理由はありません。このような責任分担の書き方は、所属契約書・業務委託契約書の点検のページで条文全体の読み方を扱っています。
書き方の例(一般的な例) 権利処理の責任分担の書き方
権利処理の責任
理由責任を、素材を選んだ側に置くことで、配信者が知り得ない素材の権利まで負わされることを避ける。
権利者の方針の変更
理由権利者の方針は配信者が決められないため、変更への対応を協議の手順にし、報酬の不利益を避ける。
映り込み・画面共有・コラボ:配信中に自分以外のものが入るとき
配信では、意図していない他人の著作物が映り込むことがあります。部屋のポスター、窓の外の看板、流れているテレビ、同じ部屋にいる人の話し声などです。写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為を行うに当たって、その対象とする事物又は音に付随して対象となる事物又は音に係る著作物は、作成された物のうち当該著作物の占める割合、再製の精度その他の要素に照らし、軽微な構成部分となる場合に限り、正当な範囲内で利用できます(30条の2第1項)。
この条文が守るのは、「撮りたいものを撮った結果、たまたま写った軽微なもの」です。画面の中心で長く見せる、意図して映す、映すことで利益を得るという利用は、この例外には入りにくくなります。たとえば、部屋の壁に貼ったポスターを背景として一瞬映すことと、そのポスターを手に取って見せ続けることは、扱いが違います。
画面共有やコラボでは、ほかの人の作品が映る場面が増えます。相手が見せている動画や、相手のゲーム画面は、相手が権利者でも、その作品の権利者は別にいます。コラボ配信の前に決めておくとよいことは次のとおりです。
コラボ・画面共有の前に決めておくこと
- 配信に載せる素材(ゲーム・動画・音楽・画像)を、誰が用意するのか。
- 用意した人が、その素材の権利者の方針(配信の可否・収益化)を確認する責任を負うのか。
- アーカイブを残すか、残す場合に誰のチャンネルに残すのか。相手の素材が映る部分を非公開にする条件は何か。
- 切り抜きを許すか。許す場合の範囲(自分のチャンネルだけか、第三者の切り抜きも許すか)を、事前に共有する。
- 収益が出た場合、誰に帰属し、どう分けるのか。素材の権利者が収益化を許していない場合の扱い。
共演者の実演(声・演技・歌)は、実演家の権利の対象になりえます。実演家は、その実演を録音・録画する権利(91条)や送信可能化する権利(92条の2)を専有します。共演者の声や姿を含む配信を、アーカイブとして公開する、切り抜いて再利用する、というときは、共演者の同意が必要になります。
大会・イベントの配信:主催者の許可と、出場者としての注意
ゲーム大会やオンラインのイベントを配信するときは、ゲームの権利者のガイドラインに加えて、主催者の許可が別に要ります。大会の規約には、映像の公開に関する条項が置かれていることが一般的です。たとえば、出場者のプレイ映像、ハンドル名、SNSの名前などが映像等で公開される可能性があることを、出場者が了承する旨の定めです。出場者としてこのような条項に同意するときは、次の点を確かめます。
署名の前の問いと理由出場者・配信者として大会規約の映像条項で確かめること
自分が個人で行う配信(出場の様子の同時配信、アーカイブの公開)は許されているか。
主催者の公式配信と競合するため、個人の配信を禁止または制限している大会がある。許可があっても、配信までの遅延時間や、情報の取扱いが定められていることがある。
主催者が自分の映像を使える範囲(目的・期間・媒体・地域)はどこまでか。
期間や媒体に限りのない、無償の利用を主催者に与える定めがあることがある。後から自分の映像を削除してほしいと思ったとき、どうなるかも確かめる。
自分のハンドル名・SNS名・声・顔が、公開されることへの了承は、どこまで含まれるか。
了承の範囲が、大会の運営・告知・記録にとどまるのか、協賛先の宣伝まで含むのかで、受け入れられる範囲が違う。
自分のプレイ映像の権利は、誰に帰属するのか。
映像に含まれるゲームの権利はゲームの権利者のもので、プレイ映像の編集物の権利は編集した人にある、というように素材ごとに分かれる。規約が「一切の権利は主催者に」とするなら、その範囲を確かめる。
主催者の配信や処分の公表で、自分に不利な情報が出る場合、異議を述べる道はあるか。
処分の内容が公表される場合や、異議の申立てに期限がある場合は、事前に条項を確認する。
どの項目も、署名や参加の申込みの前に確認します。大会規約は、定型約款として扱われる場合があります。
定型約款に当たる規約は、契約の内容とする旨をあらかじめ表示していれば、個別の条項についても合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。ただし、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされます(同条2項)。主催者の裁量を広く認める条項や、異議を一切認めない条項が、どこまで有効になるかは、個別の事情と条文で判断されます。
起きがちなことと、配信前の確認の流れ
ここまでの内容を、実際に起きがちな場面と、配信の前に確認する流れにまとめます。
起きがちなこと
- 「公式が配信を止めていない」ので許可されていると思い込み、後から収益化が認められていないことが分かる。
- ガイドラインの対象が個人の配信に限られていたのに、法人名義のチャンネルで同じ配信をしてしまう。
- 「引用」と書いて作品の映像をほぼそのまま流し、引用の要件を満たしていると主張できなくなる。
- 市販の音源をBGMに流し、生配信では問題なかったのに、アーカイブの公開で申立てを受ける。
- 案件や所属先の契約で、権利処理の責任を一括して引き受ける条項に署名し、指定された素材の権利問題まで自分が負うことになる。
- ガイドラインの更新に気づかず、禁止された内容(先行情報の公開など)を配信してしまう。
- コラボの相手の素材が映った録画を、相手の同意なしに切り抜いて公開する。
配信前の確認の流れ
確認の記録は、後で「その時点で許されていた」ことを示す材料になります。
最後に、この内容の位置づけを確認します。権利者のガイドラインは、各社が自由に定めて公表するものであり、更新も頻繁です。法律の条文は、許諾を得ていない利用が何にあたるかを示しますが、特定の作品の配信が許されているかどうかは、その作品の権利者の方針で決まります。確認できないことは、確認できるまで、配信の内容から外す選択もあります。契約を結ぶ側の視点については配信者の契約の全体像のページに、地図の形で整理しています。
よくあるご質問
ゲームの配信が公式に禁止されていなければ、収益化しても問題ありませんか。
禁止されていないことは、許可されていることを意味しません。配信は公衆送信にあたり(著作権法2条1項7号の2、23条)、著作物の利用には権利者の許諾か例外規定が必要です。権利者がガイドラインを公表している場合は、配信の可否と、収益化の可否が別々に書かれていることが多いため、収益の種類(広告・投げ銭・会員制・案件)ごとに原文を確認します。書かれていない収益は、個別の確認が必要です。
ガイドラインが見つからない作品は、どう判断すればよいですか。
公式な場所に方針がない場合は、権利者の問い合わせ窓口に配信の可否と収益化の可否を確認し、返答と日付を記録に残します。返答がないことは許可ではありません。確認できない間は、配信しない、または収益化しないという選択もあります。許諾を得た者が利用できるのは、許諾に係る利用方法及び条件の範囲内です(著作権法63条2項)。
「引用」と明記して作品の映像を流せば、許可は不要になりますか。
引用は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合に認められます(32条1項)。「引用」と書くだけでは要件は満たされません。自分の表現が主で、引用部分が従になっていること、引用部分が区別されていること、目的があることなどが問われます。映像をほぼそのまま流す配信では、要件を満たすかの判断が難しくなります。
BGMとして市販の曲を流すと、どんな問題が起きますか。
作詞・作曲の権利、原盤の権利(レコード製作者:96条、96条の2)、歌手や演奏者の権利(実演家:91条、92条の2)が重なります。プラットフォームや管理事業者が一定の包括的な許諾を結んでいる場合もありますが、対象となる配信の種類や、録画の公開、収益化の可否は、事業者の公表資料の原文で確認が必要です。許諾の範囲外では、映像の削除や収益の停止につながることがあります。
契約書に、権利処理の責任を配信者が負うとありました。署名してよいですか。
配信者が自ら選んだ素材については、配信者が責任を負うのが自然です。ただし、契約の相手方が指定した素材や、提供した素材まで配信者が負う書き方は、範囲を限定する必要があります。権利者の方針が変わったときの通知と協議の手順、報酬への影響も確かめます。条文全体の読み方は、所属契約書・業務委託契約書の点検のページで扱っています。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、契約の相手方、取引の実態、プラットフォームの規約によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 消費者庁 / 文化庁 / 個人情報保護委員会